JCDデザイン賞2002審査経過
6月18日。ワールドカップ日本トルコ戦の日である。150名の参加者と審査員も気分が高揚する中で、公開審査を行った。 会場は去年と同じTNプローブ。応募総数281点、1/4が35才以下の若い世代の応募となった。午前中の一次、二次審査で奨励賞以上の作品40点を選出。この40点の多くは30代から40代のデザイナーの仕事であり、日本の空間デザインを先導する実力派が勢揃いする。これらの作品が飲食店舗に多かったのも特徴で、最近のデザインブームが飲食店を中心とした活気であることを反映している。
午後からの公開審査は優れた仕事をさらに掘り起こすことになるのだが、複数の審査員の視点が重ならない作品が、ギリギリで優秀賞の選外となる。 この差異の理由を説明するのは。とてもむずかしい。たとえばここで選外となったグエナエル・ニコラの「エスパスタグホイヤー」と、優秀賞となった間宮吉彦の「ジービーガファス」はともに物販店で、デザインレヴェルの甲乙はつけがたい。審査は、高水準のデザインの中から、微細な一歩の向う側を見ようとすることになる。間宮吉彦の仕事に審査の視点が重なったのは、デザインを完成させ収れんさせる身振りを、ほんの少しだけ解放するテンションがあったからであると思われる。大賞選考で最後まで残った佐藤光彦の「+A VIA BUS二子玉川店」も、見えるデザイン以上に、ファッションショップのプログラムの見立ての新鮮さが評価された。
大賞選考でもうひとつ残ったのが厚秀朗の「NPC/1」で、これは宮本亜門賞となった。 宮本さんに特別審査員をお願いしたのは、演出家の眼が、空間デザインの現物をどう生々しく捉えるのだろうという興味だった。 審査の間、氏が話す感想は、身体が触れる空間の様子についてだった。この作品(動物病院の建築)については「犬が気持ちよくオシッコできるような建築だね」。
今年の大賞は文田昭仁の「日産銀座ギャラリー+日産本社ギャラリー」。全員一致で、微細な理由も不必要。 悩める審査員を楽にしてくれた。この数年でひさしぶりのことだ。文句なしの大賞。 最近のデザインの風潮のひとつである「ノーデザイン」に正面から立ち向かう力業のデザインである。
[JCDデザイン審査委員長、賞委員長 飯島直樹]
年鑑日本の空間デザイン2003 / 六耀社