JCDデザイン賞2002審査員選評
大賞受賞作品
[日産銀座ギャラリー+日産本社ギャラリー]
/文田昭仁デザインオフィス
- 直球のデザイン
選評
この施設が完成したのは2001年の6月である。銀座4丁目の角地、いわば日本の商業の中心に計画された「日産銀座ギャラリー」は、日産という車メーカーの大きな変革をシンボライズするだけではなく、大げさにいえば21世紀に向けた日本の変容のシンボルともなり得るような役割を背負っていた。
それほどに、やっかいで荷が重いプロジェクトであったから、それをどうデザインするのかは大いに期待された。それほどおおきくない空間のデザインなのに、必要以上に時代にさらされ、いや応なく現在のデザインの底を洗うことになるだろうと思われた。
文田昭仁のデザインは、直球のデザインだった。装い修辞に流されることなく、形のデザインから身を遠ざける戦略的な身振りをふりはらい、ストレートに形に向き合った。この直球デザインは、日産のリノベーションに必要なだけではない。おそらく、我々の凡庸な変化球がまん延する空間デザインにも「そろそろ必要・・・」なものである。文田昭仁の好むシームレスな空間の見立ても無理がなく、銀座の外部空間と一体化して「インテリア化した都市」を出現させた。
JCDデザイン賞2002審査委員長 飯島直樹
年鑑日本の空間デザイン2003 / 六耀社