JCDデザイン賞2003審査経過
2003年JCDデザイン賞は、海外デザイナーに参加を呼びかけた。デザイナーたちが国を横断して仕事をする最近の現実の中で、同時代のデザインの質と発見を問いかける場は、そうした現実に沿うべきであるからだ。今年は主にアジア各国に声をかけた。
結果、台湾、韓国、香港、オーストラリアから36作品の応募を得る。今年の応募は、それら国外を含めて過去最多の371点となった。
2003年6月24日(火)、公開審査。去年と同じ審査員(青木淳、近藤康夫、杉本貴志、橋爪紳也、飯島直樹)に加えて特別審査員が糸井重里である。
JCDデザイン賞は同時代のデザインの質と発見を問いかける場であるといった。両方が望ましいのだが、最近は質よりも発見の傾向がある。今年もそうなった。完成された質の高い作品が飲食店舗に多くあったが、発見という点で一様の観が否めない。一方、アジアの各国の作品は、どこか一様であることから抜き出ている。それぞれの共同幻想が異なる。発見的とは言い難いのだが官能的であったり、物質の在り様が生に見えた。
今年の大賞選考は難行した。371点の応募作から選ばれた最後に残ったのは、小さな商店とBARである。築地場外市場にヌルリともぐりこんだような高知県のアンテナショップ「コウチ・マーケット」と、極私的オブセッションがそのまま形になったようなBAR「KURA-KURA」が評価を二分したのである。難しかったのは二分した評価がデザインの出来のよさといったことではなく、築地場外市場という場の物語に介入する「デザインのしなやかさ」への評価と、モノや物質ににじり寄る「デザインの強度」への評価だったからだ。いわば発見と質、コトとモノが寿司のように二つ並置され、最終的に発見とコトが選ばれた。ちなみに、どちらかといえば発見派と目されがちな糸井さん、「あんたがたの世界、そこまでモノなのか」というようなことを良い、「KURA-KURA」が糸井重里賞になった。
[JCDデザイン審査委員長、賞委員長 飯島直樹]
年鑑日本の空間デザイン / 六耀社