JCDデザインアワード2013審査員選評
大賞受賞作品
[東急プラザ 表参道原宿]
/NAP建築設計事務所 中村拓志
この東急プラザの場所は、商業にとって大変ムズカシイ立地だ。表参道原宿のど真ん中なのに、かつて原宿セントラルアパートが在った黄金期以後建設がままならず、せっかく建てたGAPをキーテナントとする複合商業ビルも消え去った。一等地なのに、あるいは一等地ゆえに、商いが難しいのだ。その場所にもう一度建てなくてはならなかった東急プラザ。どれほどに収益、運営の資本主義に晒され、設計として一等地の重圧を受けたことか。しかしそんな困難を全身に浴びた商業ビルなのに、この建築はとてつもなく図太い。
中村拓志は、JCDデザインアワードのゼロ年代以降に特有な傾向を示した建築家の一人である。その傾向とは、90年代を席巻した透明な空気のような建築とは対極の<形の呼び起こし>といっていい。<形の呼び起こし>は主観的なフォルマリズムとも異なる。環境や与条件が形を誘発する、そんなデザインの可能性の試み(アフォーダンスの観点に似ている)がゼロ年代の若い建築家に頻出したのだった。 東急プラザで言えば高額な家賃や収益性が低下する上層フロアなど、商業ビルに付きまとう建築的与条件にふてぶてしく介入し、そこから新たなショッピングビルの型を引っ張りだした。空気感とか印象表現をはねのけ、武道家のようにソリッドな立ち居振る舞いをショッピングビルにもたらした。
原宿のど真ん中に立ち、万華鏡のトンネルと木々を抱え込む山林を見上げる。空が青い。
藤森照信ならずとも口走ってしまう。
「(野蛮)ヤバンギャルド」
一般社団法人日本商環境デザイン協会理事長 飯島直樹
年鑑日本の空間デザイン2014 / 六耀社