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「枯木灘」中上健次著
なんか重苦しくなってしまうが、やはりこの本は登場せざるを得ないのだ。
のめり込んで読んだ直後、世界が変わるように感じたのは三島由紀夫の「金閣寺」に続いて2冊目。
まるで前回の選書「共同幻想論」がそのまま小説化したような「土方の血族共同幻想譚」なのだけれど、この小説家の喧嘩上等の無頼な姿にも惹かれた。
この本を読んだ頃に所属していたデザイン事務所の代表、杉本貴志は中上健次にそっくりだった。怒気が溢れ出るような顔、押し切らんとする声、ゴールデン街の歩き方も「枯木灘」の主人公秋幸のようだった。
その頃のスーパーポテトのデザインは硬質なミニマルなものだったが、実は不透明で荒々しい無頼さを隠し持っていた。
「枯木灘」はそんなことも思い出させてくれる、無頼であり先端でもある小説だ。