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「引用の織物」宮川淳著
これはですね
友人の建築家 押尾章治さんに先越されちゃった故の選書。だって宮川淳の最も美しい「紙片と眼差しのあいだに」、あの小さく薄い珠玉の本を選ばれちゃったので、途方に暮れてしまったのだ。
評論を超えた美術をめぐる思考、鏡についての底深いイメージやアメリカの先端の美術の動向を、断章のような簡潔な文章で道案内してくれる。簡素だけど詩のようなイメージの収集庫として読める。未だこの人を超える美術の著述者はいないと思う。
「鏡・空間・イマージュ」「紙片と眼差しのあいだに」「引用の織物」それらはアンフォルメルから抽象表現主義、そしてフーコー、ドゥルーズ、デリダ、磯崎新への直感的かつ詩のような文章の記述で僕らをけむに巻いた。
若くして夭折したが、そのやや暗い相貌は、ジャンピエール・メルビルの映画にでてきそうな孤独な青年の風情だった。
お得なのは宮川淳著作集1だ。読むべきテクストが全てある。高いけど。(美術出版社)
ミヤガワアツシと思い込んでいたのだが、このチャレンジで本を見返していたらミヤカワアツシとあった。恥いるばかりである。