- レモンハート | Lemon Heart <2001>
レモンハート
2001
用途 /BAR
所在地/東京都練馬区大泉学園
面積 /40㎡
- 眼のやり場
ふたつのBARがある。ひとつはこの大泉学園に実在するBAR「レモンハート」。もうひ
とつはマンガの中のBAR「レモン・ハート」。でも両方ともオーナーは同じだ。マンガ家
古谷三敏氏。
赤塚不二夫をとりまく四天王のひとりといわれたマンガ家だけに、世間との距離の置
き方というか、常識からの乖離感はただならぬものがある。その古谷さんがマンガの
中で作ったBARが「レモン・ハート」。後に、スコッチ好きのムズムズした気持ちから実
際のBAR「レモンハート」を開店、経営することになった。
最初の店の設備の老朽化で近くのビルの地下に移転するときに、「今回はシロウトの
デザインではなく専門のヒトに頼んでみようか」ということになったのである。仕事の
はじまりとはそんなものだ。業務期間中はそれこそ「仕事柄」古谷さんと酒を飲んだ。
話したことはほとんど忘れたが、覚えていてもここには書けない。その内容が距離的
には世間の果て、常識の乖離が相当に含まれていたということで、察してほしい。開店
の日、身内のお披露目の後、3軒となりのカラオケバーに繰り出した。古谷さん、マイク
を握りしめ「イイジマさん、カラオケをやるときは全身で立ち向かわなければいけませ
ん」。以来、私はこのコトバを肝に銘じている。BARは他人同士の眼が交錯してそのこ
とがかなり気になる空間だ。だからカウンターのL型配置には気を使う。この「レモン
ハート」は小さな空間だが、坐って眼のやり場のあるBARになるよう心がけた。